雑木林ものがたり

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    風渡る道

わたしのいつものウォーキングコース、
山道を辿ってゆく。
両側には雑木林が繁っていて、歩いていると
森の匂いがする。

峠を越えると、やがて里山が広々と見渡せる。

大好きなコースである。

広がる里の周りがまた 山、山、山、・・・。



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かって、1960年代、

連なる山々や丘陵地を切り拓き、大規模団地が
建設されはじめた。


伊勢湾台風による甚大な被害のあった翌年の
ことである。

台風禍のない地へ・・・、
山や丘陵地のある高台に・・・、


”究極の高地移転“に挑んだ ”究極のプロジェクト“
とされた。



東大出身の建築家・当時 日本公団住宅のエース
だったTさんは、
そこへ 風の通り道になる雑木林を残し、
自然との共生を目指したニュータウンを計画。



しかし、理想と現実との相克、


高い山の土木工事は難渋したようである。



 
          初期DSCF5248 

             団地DSCF5247     
                         
               団地2DSCF5246
  
 



雑木林は伐り倒され 山は削られ・・・、

出来上がったのは 理想には程遠い巨大な
団地群であった。



          
             団地DSCF5243 
     

 




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     人生フルーツ



それから50年・・・、Tさんご夫妻はそこに
住み着き、雑木林を育てた。


 
           邸DSCF5249   
   
                   邸1DSCF5265



地域の人々に提唱し、後ろのはげ山にどんぐりを
植え、雑木山を育てよう・・・という試みにも
尽力された。
    
           

          
                 どんぐり2DSCF5269

  
              
                        
                              

通称 ”どんぐり山”は こんもり繁り

風に揺れる木々の梢

どんぐりの散らばる土に 木漏れ日さし

そこは今 市民の憩いの場にもなっている。


        のちの山DSCF5264 
 

                 どんぐり山DSCF5271 

        
                         どんぐりDSCF5272 
   




        

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Tさんご夫妻の暮らしを追った”ものがたり”
ドキュメンタリー・「人生フルーツ」


テレビ部門・グランプリ受賞し、このほど、
1月~~ 映画となって公開される。
*ナレーションは女優の樹木希林さん

   

     *

公開にさきがけ、24日・地域のホールで
”完成披露上映会”が催された。


わたしは抽選に幸運にも拾われ、鑑賞に行って
まいりました。



土を耕し

野菜を育て

木の実を成らせ

自然に沿って、素朴に、 紡ぎつむぎ・・・、
そんな暮らしをつづけていると、


このような、お顔になるのか、・・・と感嘆する
ご夫妻である。


スクリーンを通してであるが
日常のお二人を観ていると
”にほんの原風景の夫妻”のありよう・・というか、

なんだか 涙があふれてきそうな・・・
ふしぎな感慨であった・・・。





            夫人DSCF5232 編DSCF5279   

            夫DSCF5242 夫DSCF5240 

  
                      ご夫妻DSCF5274 


 
    

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Tさんは 現実の都市計画や建築には
距離を置くようになり、
師のアントニオ・レーモンドに倣って建てた
木の家に自由な風情で暮らしつつ・・・、


      シンボルDSCF5273 


           さくらんぼDSCF5239 


                庭DSCF5263                        


       小鳥DSCF5237 


 

先年90歳・
草むしりのあと、
昼寝したまま 起きてこられなかった。

            

         
               追悼の家DSCF5278 


            夫逝去DSCF5233 

           
                 



 
     *

かねて、お名は見聞きしながら、実際にお目に
かかる機会は逸してしまった、けれど、
ご夫人は今も ご達者で雑木山に囲まれた素朴
な家で過ごされている。
夫人の機敏な身ごなし、動く手の早さ、
おトシには見えない気丈さに見受けられる、


が、おひとりの身で広い敷地の木々や土地、
家を守っていく困難さはあると思われる。



         庭DSCF5252


   
 



     *

そこに初期の頃から暮らしている詩友たちから
よく聞かされた、


「住み始めたころはね、雨が降ると、道もどこも
泥んこで、長靴履いて歩いたわよ・・・」





独身時代、職場に 「ニュータウン」から通って
いるという同僚がいて、 
 わっ、なんて、田舎から?!・・・、
って思ったこともある。




まさか 数十年後にじぶんがその近くに棲む
ことになろう・・・とは 考えてもいなかった。


   


     *

桜の春

紅葉の秋

遠く遙かに見える山々・・・、 

樹々に囲まれたニュータウンへの広い道路を
走ってみると、しみじみ 想う。



なんと 美しい風景であることよ・・・、
しみじみ 豊かな幸福感を噛みしめるのである。





そのニュータウンも、今や空き家が増えはじめ、
中堅スーパ-が撤退し、お店も減り、学校が閉鎖・
合併されたり、衰退の傾向にある。


時代の波に押されてしまうのか・・・。



駅前付近は どんどん高層建築が成され、
住宅が立ち、発展しつつある?様相ではある。


街ぜんたいが丘陵地なので、散策には向いて
いるが、買い物には車がないと不自由な街
でもある。


でも わたしめ、日頃のブログにも記している
ごとく、”辺りを歩きに歩く・・人生”を送って
いる。




  
     *

映画を通して、知り得た二つのメッセージ。



 ~~家は暮らしの宝石箱でなくてはいけない~~

 ~~菜園のある暮らし~~





わたしが ”終の棲家”に移るとき、

すでに 老いつつ年齢であること、

大黒柱いない、跡継ぎいない、資金ない、

ないない尽くしで、周囲から猛反対もされ、

不安と艱難、それら、撥ね除けながらの
決行であった。




苦労のはてに移った 「家」

山と川に囲まれた ”ちいさなおうち”

 わが生涯の 宝物である。




それを守っていくことに、費される日々、
やりたいことも我慢して、家の保全作業に
掛かってるの? との疑問のときには、

こころの答えに添って動くことにしている。




山の落ち葉を集めてきては、狭い狭い畝に
撒く。落ち葉は野菜たちや花の寒冷よけ
になり、やがて 堆肥になる。


実寸大・ゾウのおでこ、通称”デコ園”を
毎朝、見回りながら、野菜や花たちに声掛けを
する、 そんな他愛のない至福のときには、
独り居の不自由さ、寂寞など、 どこかあっち
のほうに吹っ飛んでいる。


      


映画鑑賞のあと、印象に残った
ふたつのメッセージ、



はからずも 
じぶんは 知らず実践している・・・と
いうことに気付かされたのである。 
 



        12/30野菜DSCF5281


  


      ~~了~~


 **上記  掌編・創作のつもりで書きました・
 関係各者各位へ ご了承願います**