花の降ったあと

 
降りしきったあとの 花蕋が
土のいろに馴染むころ
山の道は 葉桜の濃い翳りになる


ゆるい勾配のさき
竹藪のあたり 昏い地から
潔く 天へつきあげる蒼さ
藪の尽きる窪地に 低い軒が朽ちかけている


住むひとをなくしたそのときから
家はくずれ ひずみ
長い刻をかけて 朽ち果てていく
傾いた戸口は 住んだひとの息や手の
意思を残さない
板戸は外れ
隙間から 闇がのぞく
空漠の月日をかかえこんで
ぼろぼろ くずれていくのがみえてくる


と ふいに
風の草原がみえてきた


 
 老いた一頭の象が 群れから離れ
 草深い道を 茫茫 幾日か
 ついに 窪地に往きつき立ち止まり
 しずかに足を折り 蹲る
 長い鼻さきで
 谷から吹いてくる風を すくっては
 口に運び すくっては運ぶ
 風の空洞となって
 いつしか くずれて
 朽ちていく
 おおきな
 まぼろし



ふっと 見上げれば
雑木林の みどりの新芽が伸びあがって
朽ちた軒を 巻きこんでいる
そこに山つつじの橙色も咲きだしている

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