花の降ったあと




降りしきったあとの 花しべが
土のいろに馴染むころ
山の道は 葉桜の濃い翳りになる


ゆるい勾配のさき
竹藪の辺り 昏い地から 
潔く天へつきあげる蒼さ
藪の尽きるくぼ地に 低い軒が朽ちかけている


棲むひとをなくしたそのときから
くずれ ひずみ
雨と風と無慈悲の月をかけて
朽ち果てていく
傾いた戸口は ひとの息や手の意思をのこさない
外れた板戸の隙間から 闇がのぞく
空漠の月日をかかえこんで
ぼろぼろ くずれていくまぼろし


* 

と ふいに
風の草原が見えて来た

  老いた一頭の象が 群れから離れ
  深い藪の道を茫々 幾日
  ついに くぼ地に立ち止まり
  しずかに足を折り 蹲る
  長い鼻さきで
  谷から吹いてくる風を すくっては
  口に運び すくっては口に運ぶ
  やがて 風の空洞となり
  くずれ 朽ちていく
  おおきな まぼろし




ふと見上げれば
雑木林のみどりの新芽が伸びあがって
朽ちた軒を巻きこんでいる
そこに 山つつじの橙色も咲きはじめている




**
注 旧作を編み直した詩作品**

Secret

TrackBackURL
→http://fuurenka231.blog.fc2.com/tb.php/232-ad28d947