十一月 ― 赤い月

 

 

暮れるほんのすこし前の

夕刻

登っていく坂の上の 空に

赤い 丸い 月が見えた

 

西の方位の夕焼けや

沈んでいくお日さまの

彩を 月が引き継いで集めた 

赤 のような

 

赤い色は

希望とみるか

悲哀とみるか

 

登り坂を歩いていると

来し方の多数の情景が浮かんでくる

 

むかし 

坂の両側には

桜大樹の並木が 

空を覆うように繁っていた

春には 薄い桜色に染まった大きな大きな

トンネルの下を

夢のように歩いた

 

桜樹は工事で伐られ

また老木になって枯れて朽ちていき

今は 僅かにのこった枝が

しきりに葉を落としている

 

赤いまん丸なお月さまは

いくぶん俯いているように見える

 

坂の途中で右に折れて下り

だれもいない家のドアを開ける

お帰り。

 

家のなかから見上げると

赤くない色の

いつもの

澄ました月が浮かんでいる

  おやすみ。

 

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