2014.01.05 草々の余生

       くさ       
       草々の余生

 

 

老いて処分寸前だった競争馬を

元校長先生だった人が 引き取ってきた

 

丘陵地の裾を借り受けて 枝木を払い伸びた草を刈り

柵で囲い 小さな丸い牧草地を整えていく

 

       ☆

 

散歩の足を延ばして会いに行くと

さして広くはない草の原に 馬は佇んでいた

柵の杭に草を乗せて 長い顔の位置でその草をはむ

ゆったり はんでいる

馬のやりかたで

馬の時間で

 

帰る時 池のほとりで振り返り

 おぉ~~い、

と 呼んでみる   また来るねぇ~

馬の耳がコトン、動いた

優しい すこし哀しい 澄んだ目

 

      ☆

 

あとを引き継ぐ人たちが来て 牧場は広げられ

馬の仲間も増えた

狭い柵のなかで

草を食んでいるだけだった馬に

あたらしい仕事が来た

 

さみしい澄んだ目をして

じっとうつむいていた馬たちが ゆったり動きはじめた

大きな褐色の背中に子どもを乗せて

草の原っぱを

ぽくり  ぽくり   ぽっくり・・・

病気で歩けない子どもたちを

振り落とさないように

回り歩く

 

かって 広い場内を駆け抜けた

栄光の一瞬もあった

いつだって人の思惑や都合で生かされてきた

しゃにむに走った 駆けた

傷み老いた身

細くなった脚で再び疾駆することはない

厩舎から 遥か丘陵の地に連れてこられた草の原

の 余生

 

車椅子の子どもたちを背中に乗せて

澄んだ目をして

ぽくり  ぽくり   ぽっくり・・・

 

子どもたちの居ない時には パッカ、パッカ、・・・

むかしをおもいだすようにゆるく走ることもある

 

高い山々から田圃を抜けた風が

草やたてがみを揺らしている  

 

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